外国の花と戦うために

氏 名:伊藤 仁嗣 さん
年 齢:31歳
出身地:砺波市
就農年次:平成18年



就農までの経緯は?
 実は、大学在学中に1年間休学して実家で働いたんです。大学は経済関係の学部だったので3年からゼミに入るのですが、ゼミの選び方で就職先がある程度絞られます。実家で働くことにしたのは、家の仕事をよく知るためでした。ゼミを決める前に、東京で就職するか家を継ぐかを決めることが必要だったからです。そして、実家で働くうちに後を継ぐことを決意したので、ゼミは経営系の研究室に行きました。その後、就活はせず、卒業後オランダに2年間研修に行ったんです。

どういう時に継ぐ決意を?
 実際に働くと、朝8時から夜までの労働が1年間続きました。その経験を通して、どの仕事にも辛い部分も良い部分もあるということに気付いたんです。自分が良ければ、どの分野に行ってもそれなりの結果は残せると思ったのが結論ですね。また、自分みたいに東京の経済関係の大学を出ていて、農業というバックグラウンドがある人は、かなり珍しいんです。そういう意味でも農業を継ぐのはいいかなと思いました。継げばオランダ研修に行けることも大きなポイントでしたね。

オランダはどうでしたか?
 オランダは園芸先進国ですから、行ってよかったですね。行かなかったら、考え方が全然違っていたと思います。現場ではずっと働いているだけで、手取り足取り教えてくれるわけじゃありません。聞けば教えてくれますが、質問するかどうかは研修生次第ですね。

どういうところが良かったのですか?
 日本でチューリップ球根や切り花の栽培をしていたら、東京の1番大きい市場で評価を得ることが最大の目標になると思います。でも、研修先のオランダの会社は球根も切り花も作っていましたが、取引相手は国内だけでなく、アメリカやスカンジナビア、ヨーロッパなど世界中なんですよ。また、南半球のニュージーランドやチリと提携して、1年中球根を出荷できる体制を整えていました。他にも、営業マンと一緒にスカンジナビアやフィンランドの生産者のところに行った時には、フィンランドが規模を拡大していく成長過程などを見ることができました。2年間そういう環境にいたので、帰国した時も、いずれは中国やロシアに花を輸出したいと自然に思うわけです。そういう考え方になったのは、オランダにいたことの大きい利点ですね。

帰国後すぐに株式会社「センティア」を立ち上げたのですか?
 約2年間は父の個人事業のままでしたが、平成20年の秋にセンティアを作って代表になりました。親父は役員、母は従業員で、メインは家族経営です。でも、今は従業員2人を雇っていますし、就農当初よりも家族色は薄れつつあります。規模を拡大していくことになったら、新しい人材も入れていかないといけませんし。

センティアの特徴は?

 オランダの栽培技術を全部コピーしているので、日本の栽培技術とは全然違いますね。大きな特徴は、生産性の高さ。実際、父が同じハウスでシーズン10万本作っていたところを、僕のやり方で40万本生産できたんですよ。u当たりの生産本数が4倍。温室の建設費の減価償却や土地代は1本当たりにかかる経費が1/4、暖房代も1/3か1/4になりましたね。

出荷先は?
 80〜85%が東京や富山などの市場で、残りの約15%は、ギフト用の花束や欲しいという人に売っています。今は国内に出荷していますが、20年後は外国に出荷しないとダメだと思いますね。国内での競争相手が外国の花になると思うので、その花に勝たなければいけません。その時にいい勝負ができたら、その次は輸出ですよね。

今後の目標は?
 世界の切り花の単価の基準は、アメリカの26円です。フィンランドは28〜29円。28〜29円で納めているフィンランドの会社は500万本作っています。だから、自分も今から設備を考えて作っていけば、500万本はそんなに難しい話じゃないと思いますね。やらなかったら負けます。これからは、アメリカの価格に近づいていくんでしょうね。例えば、今52円で採算がとれている組織が日本の大半だったら、一気にやられるんじゃないですかね。なので、自分は規模を拡大していきます。外国への出荷も考えているので、国際競争の中で戦っていける質と本数を生産できるようにしていきたいです。

新規に就農する方にメッセージを 
 もっともっと野心的にならないとダメですよね。これからは、もっと規模が大きくてもっと野心的な人と戦っていかないといけないわけですから。外国への出荷も考えているので、国際競争の中で戦っていける質と本数を生産できるようにしていきたいです。

■現在の経営内容
水稲           15ha
作業受託         5ha
チューリップ球根     5ha
チューリップ切り花  約50万本


■将来の経営構想(平成23年以降の目標)
・チューリップ切り花 120万本
・チューリップの規模拡大と品質の向上


社団法人 富山県農林水産公社 
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