就農の動機は?
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県の職員だった時、農林水産省の畜産試験場という研究機関に派遣されました。その時、肉の加工にふれる機会があったんです。ハムやソーセージを作る機械があって、それらが日本に伝わってきた時の製法で作っているんです。その機械で作られた物を食べた時に衝撃を受けて。こんなに美味しいものがあったんだと。この美味しさを消費者に伝えることは、畜産や農業を理解してもらうための一つの方法じゃないかなと思ったんですよ。その後5年間は県の職員をしていましたが、30歳の節目に研究テーマが一段落したこともあって、やりたいことをやろうと決意して退職しました。
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ソーセージなどの作り方は独学で?
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本場のドイツの方式でソーセージを作っている肉屋で、しばらく修業させてもらいました。あとは、文献や海外の資料などから得た知識ですね。それで試行錯誤しながら今に至っています。例えば、国内の大手メーカーで安く売られているハムは、異種たんぱく質を入れて増量させたものなんです。だから、原料の肉より安い。ドイツでは、そういうことは禁止。法律で厳しく決められています。それを守ると割高になりますが、そうして作られた物を求めている人は少数でも必ず富山にもいるだろうということで、ドイツの方式で作っていますね。
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肉屋さんをオープンした経緯は?
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家は肉用牛を飼育する農家で、肉屋ではありません。だから、育てたものを販売したいという思いが、このお店をオープンした理由なんです。生産から販売までやる以上は、人気のある部分だけ取ってきて売るのではなく、1頭丸々引き取ってきてすべてを使い切りたいという気持ちがありました。となると、精肉の販売だけでは限界があるので、ソーセージやビーフジャーキー、コンビーフなどに加工することで、肉以上に付加価値をつけて販売することができるっていう。そういうことで、通常の肉屋とは違うスタイルになっているんです。
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1人で生産から販売まで?
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当初は僕と両親でやっていましたが、さすがに手が回らなくなってきたので、今は両親と弟が牧場、僕が加工販売と分担してやっています。昨年4月から従業員が1人入ったので、一緒にソーセージを作っています。弟は工業系の大学出なので、全然畑違いなのですが、言いくるめて(笑)。
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大和にお店が入っていますよね?
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最初お話をいただいた時は断ったのですが、このお店に中心部から1時間に1本のバスに乗ってくるという年配の方が結構いらっしゃるんです。「車の運転はできないから、もう少し近くにあれば毎日行けるのに」と言われていたので、そういう要望に応えたいというのがありましたね。あとは、地元の原料を使って作った物があるということをアピールするいい機会かなって。イタリアやスペインなどの美味しい畜産物を紹介したいという思いもあったので、大和では自家製のハムやソーセージ以外に、海外の生ハムやサラミなどの種類も充実させています。お総菜や精肉は置いていません。ハム・ソーセージ専門店ですね。
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これからの方向性は?
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今の2店舗でできるだけ多くの人に畜産物の良さを知ってもらえたらいいなと。テレビや新聞だけでなく、直接口で伝えたいという気持ちもあります。お客さんと話をしていて、畜産物への誤解が解けると、すごく嬉しいんです。食べ物の話から農業の話へ発展することを当初の目標にしていたのですが、それは今も変わらないですね。宣伝は全然していませんが、人伝てに聞いて来店される方もいるので、徐々に広まっていってくれればいいかなと思っています。
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新規に就農する方にメッセージを
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農業をビジネスと捉えて、将来の展望を持って取り組めば、きちんとお金を稼げる職業だと思います。今までのようにのどかにやって飯食っていければいいやみたいな時代はそろそろ終わりかなと思います。ただ好きなだけじゃダメですね。ある程度の収入があって、かつ好きだと思えることをやっていかないと、何十年と続かない仕事だと思いますよ。
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