土づくりにこだわったぶどう作り

氏 名
年 齢
就農地

就農年次




御囲 大介(おかこい だいすけ)

36歳
黒部市
平成23年

【自家就農】

― 経営の概要を教えてください。

 私と妻、家族でぶどうと米を生産、直売しています。米農家としては私で6代目で、2008年から直売、翌2009年にぶどう栽培を始めました。ぶどう(生食用)が30aで約20品種、米は4ha、全てコシヒカリです。ぶどうのシーズンは土日メインで、直売所を開けています。

― bossa farm(ボッサ・ファーム)さんのこだわりは?

 「お客様に安心・安全でおいしいものをお届けする」のは、当たり前のことです。ぶどうは、草生栽培という栽培方法を行っています。ぶどう畑に草の種をまいて生やし、刈り取り、それを肥料にするのです。また米農家でもあるので、米ぬかも肥料として使います。化学肥料は一切使っていません。農薬の使用を極力減らし、なるべく自然の、山の土壌に近付ける努力をしています。あとは、新短梢剪定といって、ぶどうの房が一列に並ぶように樹を仕立て、摘粒などの管理作業をやり易くしています。ぶどうのひとつひとつが自分たちの作品ですから、形がよくなるように、おいしくなるようにと考えてやっています。繊細な作業で大変なところもありますが、それが面白いところです。

― 就農までの経緯を教えてください。

 米農家で生まれ、農業が身近だったので入善高校の農業科に進学しました。そこで先生に「転作に、ワイン用のぶどうを作るのはどう?」と言われて、それからぶどうに興味を持ちました。もともとぶどうが好きでしたし。高校卒業後に山梨に出て、大学校で4年間、ワイナリーの研修やぶどうの栽培技術を学びました。

― 就農するにあたって、どんな準備をしましたか?

 大学校卒業後、「やまふじぶどう園」に農場長として入社し6年間勤め、その後退社し、実家近くの黒部の農業会社に2年勤めました。すぐに家の米農家を継がなかったのは、稲作を学ぶのと同時に、市内の他の農家さんとのつながりを作りたかったからです。同時進行で、自分のぶどう園を開く準備もしていました。その後独立し、今に至ります。

― 就農の前後で、農業に対する思いやイメージに変化がありましたか?

 独立するまでにできる限りの準備はしたつもりだったんですが、実際にやってみて感じたのは「植えて初めて学ばされることがすごく多い」ということですね。ぶどうは特に難しいです。いくらパーフェクトな知識を持っていたとしても、実際その土地に植えてみないと、どういうものができるかはわかりません。
 また気持ちの面で言えば、とにかくお客様のことを第一に考えるようになりました。お客様との交流を大事にしたいと思っていまして、ぶどうの摘み取り体験もそのひとつです。地域貢献というか、なるべく地元の方に楽しんでいただけるぶどう園を目指しています。うちは小規模でやっているので、広く宣伝することなく、地元の方が立ち寄りやすく、地元の方を大切に、地元の方に愛される農家でありたいと考えるようになりました。

― 今後の目標は?

 直売所を、もっともっとお客様と交流できる場にしていきたいですね。ピアノがあるので、コンサート等にも使っていただけたらと。ぶどうに関しても今は摘み取り体験をやっていますが、できたてのぶどうジュースなども楽しめるようにしたいと思っています。うちは小規模ならではの特徴を活かしお客様との距離が近く、親しみやすさや、地元のお客様が気軽に立ち寄ることのできる場所でありたいと思っています。そして何よりも、息子の代に自信を持って渡せるようなファームづくりを目指しています。彼に、継げとは言いませんが、自然とやってみたいと思わせるような、それくらい魅力的なファームにするのが目標ですね。

― これから就農を考えている方にメッセージを。

 知識・経験をしっかり身に付けた上で取り組んでほしいです。作物は実際その場所に植えてみないと、どうなるかは分からない。いくら経験を積んでも、勉強しても、失敗することはあります。でもそれにちゃんと対応して改善するには、やはり知識と経験が必要です。そういうものをしっかり積んだ上で、けれど失敗を恐れずに始められるのがいいと思います。厳しいことを言うようですが、知識と経験があれば、一度失敗しても簡単に辞めることにはならない。度々聞くんです、農業を始めてみたけれど実際やってみたら甘くなくて、失敗して、だからもう辞めるわ、みたいな話を…。そうならないためにも、果樹は特に、きちんと準備をしてから始められたらいいかなと思います。