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田んぼが豊かな旅川を残したい


大橋 昇 氏 名:大橋 昇(旅川農産有限会社)
年 齢:36歳
就農地:南砺市
就農年次:平成18年(法人就業)



まず現在の作付状況を教えてください。

   米(主にコシヒカリ)60ha、大麦27ha、大豆18ha、そば5ha。メインは米です。これを社長以下7名で対応し、忙しい時は、地元の方に応援してもらっています。
   

米は何かこだわった栽培方法を?

   有機・無農薬のような栽培ではなく普通の栽培です。コシヒカリは、穂肥を使用する栽培方法ですが、その他の品種は、できる限り基肥一発肥料を使っています。施肥量などは、田んぼ1枚ずつ土質も違い、また稲の生育も異なるので、状況に合わせています。
   

販売先は?

   ほぼ全量、農協です。ただお米は、知人等からの依頼や紹介で、一部直接消費者に販売していますし、モチ米は製菓業者に納めています。そばも半分ほどは、社長が別に経営しているそば屋の方で使っています。
   

一部とはいえ、一般の消費者と直でやり取りするのは緊張するでしょう。

   知人の農業法人で、直販を取り入れているところは、専属のスタッフを置いています。そしてクレームがないように細心の注意を払っておられます。そば屋は別として、当社の現状ではそこまでのことはできないように思われます。ただ、これは中京のあるお客様の例ですが、そのお客様は、以前は他の産地でとれたお米を食べておられた。何かのご縁で当社の米を食べられてから、変えられたそうです。買っていただく米の量も毎年増えています。もしお客様の満足できる米でなかったら、当社へのご注文は途切れるでしょう。こういう緊張感は、多少はあった方がいいと思います。
   

就農前は、農協で営農指導をされていたそうですね。その視点で、例えば何か新しいことに取り組むとかは?

   以前、高知県の農家に視察にいきました。その時、これはメロン御殿、あれはニラ御殿などと紹介されました。メロンやニラの栽培で財をなし、立派な家を建てておられた。広い屋敷に2軒、3軒と連なった家もありました。「米はどうしているのですか」とうかがうと、「ハウスの脇で食べる分だけつくっている。それ以上の米をつくってどうするの?」と真顔で聞かれました。
   

私も高知県へは何度も行ったことがありますが、大きなハウスがたくさん建ち並んでいますね。

   気候などの条件が違うので一概には言えないのですが、地域によって農業への取り組み方が違うと実感しました。
   

野菜の栽培に取り組むとかは……?

   今までの私どもの場合は、高知県の逆です。米をメインにして家で食べる野菜を、裏の畑でつくっていました。それが商品として販売できる野菜かというと、そうではありません。商品に育て上げる技術を持っていない。でも経営という観点からみた場合、野菜の栽培も取り入れたらいいのではないかと思ったのです。
   

農閑期も常用従業員がいて、一定の経費は毎月必要なわけですから……。

   そうです。そこで社員といろいろ相談して、冬の間は、ハウスの中でほうれん草とか小松菜を栽培して出荷したらいいのではと、話がまとまりました。社長に相談したら、やってみようとなったのです。それで平成25年の夏頃にハウスを建て、今年の秋から野菜づくりを計画しています。
   

そうすると農閑期がなくなって一年中忙しくなるのでは? 休みの日は何を。

   子どもが生まれる前は、いろいろスポーツもしていましたが、子どもが生まれてからは、休みの日は子どもと一緒にいることが多い。
   

お子さんは何歳?

   上が男の子で3歳、下は女の子で3カ月です。(24年12月時点で)
   

大橋さんが家業を継ぐ決心をして旅川農産に入ったように、いずれ子どもが後を継ぐという日が来るかもしれませんね。

   私の場合、父(=旅川農産の社長)から、後を継げといわれたことはありませんでした。父はずーっと農業をやってきていますが、昭和63(1988)年に法人化しました。その時、会社の名前を「旅川農産」にしたのですが、それはこの地域を流れる川の名前に由来します。父は、旅川とその周辺の田んぼの自然を守りたかったのです。その事業を引き継ぐのは、私ではない第3者もあり得ると父は思っていました。
   

親戚筋ではない誰かも含めて?

   そうです。志を持って来てくれるのなら、県外の人でも構わないという考え方でした。私も今そう思っています。10年ほど前、旅川にはホタルがほとんどいませんでした。それが4〜5年前から飛びはじめ、最近は結構飛んでいます。スーパー農道の脇の水路にも、ホタルが戻ってきました。農家の方々の農薬の使い方が変わってきたのでしょうし、下水道の普及で、生活排水などもあまり流れ込まなくなったことがあるのかもしれません。
 田んぼが豊かな旅川って、私たちにとっては宝物です。
 

  ■現在の経営状況
水稲(米) 60ha
大麦 27ha
大豆 18ha
そば 5ha


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